赤文字系とは、女性誌が提案したコンサバ、フェミニン、ギャルなどを基調に、華やかさと好感度を意識したファッションスタイルのことです。
雑誌によって共有された華やかな女性像

赤文字系は、『JJ』『CanCam』『ViVi』『Ray』など、誌名ロゴに赤やピンクを用いることが多かった女性ファッション誌と、その誌面で提案された服装をまとめる呼称です。各誌の方向性は同一ではありませんでしたが、女子大生や若手社会人を主な読者として、華やかさ、女性らしさ、きちんと感、周囲からの好印象を重視する点で共通していました。
アンサンブルニットやブラウス、膝丈スカート、ワンピース、パンプスなどを使うコンサバ寄りの装いが代表的である一方、『ViVi』のようにギャルや海外トレンドへ近い誌面も含まれます。そのため、赤文字系は一つの決まったコーディネートではなく、当時の有力女性誌が示した「華やかで憧れられる女性像」を表す雑誌文化として捉えるのが適切です。
現在では赤文字系という名称を日常的なスタイル分類として見る機会は減りましたが、1990年代から2000年代の女子大生、通勤、デート、モデル文化を記録する言葉として重要な位置を占めています。
女子大生雑誌から「モテ」の時代へ
1970〜1980年代|女性誌ごとの読者像が形づくられる
『JJ』は1975年に創刊され、女子大生を中心とする若い女性の服装や生活を扱う雑誌として発展しました。その後、『CanCam』『ViVi』『Ray』が相次いで登場し、大学、通勤、恋愛、旅行など、読者の日常を想定したファッションを提案する雑誌群が形成されます。
この時代は後年の「赤文字系」という名称が一般化する前段階ですが、雑誌ごとに専属モデル、読者像、定番ブランドを持ち、誌面のコーディネートが買い物の基準になる仕組みが整いました。赤文字系雑誌の変化は、1980年代の『CanCam』を扱った研究対象にもなっています。
1990年代|コンサバとギャルの間に広がる
1990年代には、ジャケット、ニット、ミニスカート、細身のパンツ、ロングブーツなどを使った華やかな服装が広がりました。『JJ』が得意とした上品なお姉さん風、『ViVi』のギャルや海外トレンドに近い装いなど、雑誌によって甘さや強さには差がありました。
高校時代にギャルファッションを経験した女性が、進学や就職を機に赤文字系へ移る流れも見られました。派手さを完全になくすのではなく、髪型、メイク、体に沿うシルエットを残しながら、社会人や女子大生らしい服装へ整える受け皿にもなっていました。
2000年代前半〜半ば|赤文字系とエビちゃんOLの最盛期
2000年代に入ると、雑誌ロゴの色に由来する「赤文字系」という呼び方が広く定着しました。一般に『JJ』『CanCam』『ViVi』『Ray』が代表誌とされ、場合によっては『PINKY』なども含めて語られます。
なかでも『CanCam』は、蛯原友里を中心とする「エビちゃんOL」を打ち出し、淡色のアンサンブル、花柄スカート、巻き髪、華奢なパンプスなどを組み合わせた「めちゃモテ」スタイルを広めました。2000年代半ばには同誌の発行部数が80万部を超えた時期があり、誌面のモデルが服だけでなく髪型や生活像まで含めた憧れの存在となりました。
2000年代後半〜2010年代|雑誌ごとの路線が分かれる
好感度を重視した甘いコンサバだけでなく、デニムを使うカジュアル、海外セレブ風、ギャル寄り、トラッド寄りなど、各誌の違いが明確になりました。『JJ』ではメンズライクな「彼カジ」が扱われるなど、従来の甘い女性像だけでは説明できない変化も起きています。
インターネット通販やSNSが普及すると、雑誌一冊を手本にして服を揃える消費行動は弱まりました。赤文字系という大きな括りも次第に使われにくくなり、きれいめ、フェミニン、オフィスカジュアル、お姉系など、より細かな名称へ分散していきます。
誌面を赤文字系らしく見せた服と小物
- アンサンブルニットと女性らしいブラウス:体に沿うコンパクトな形と整った襟元が、親しみやすさときちんと感を同時に示していました。パステルカラーや白は、2000年代の愛され系を象徴する色として多用されました。
- 膝丈スカートとミニスカート:フレア、マーメイド、タイトなど、雑誌や年代によって形は異なります。脚を長く見せる丈とウエスト位置が重視され、通勤とデートの両方を意識したシルエットが作られました。
- 細身のジャケットとウエストを絞ったコート:肩から腰までの線を整え、全身を女性らしく見せる役割を持っていました。短めのジャケットや裾が広がるコートは、赤文字系特有の華やかな輪郭を強めています。
- パンプス・ロングブーツ・ブランドバッグ:ヒール靴で脚の線を伸ばし、存在感のあるバッグで誌面らしい完成度を加えていました。服と靴、バッグまで同じ世界観で揃えることが重視された時代です。
- 白・黒・ベージュにピンクや水色を加えた配色:基本色で上品さを保ちながら、淡色や花柄で華やかさを補いました。一方、『ViVi』などでは鮮やかな色、メタリック、アニマル柄も使われ、赤文字系内部の違いを作っていました。
誌面で繰り返された代表的なコーディネート
エビちゃんOL風の愛され通勤コーデ
淡いピンクや白のアンサンブルニットに、膝丈の花柄フレアスカートを合わせ、足元をベージュのパンプスで整える装いです。ウエストを細く見せ、小ぶりなバッグ、パール系アクセサリー、ブラウンの巻き髪を組み合わせることで、2000年代半ばの『CanCam』らしい華やかな通勤像を作っていました。
白ワンピースとデニムジャケットの休日スタイル
白やアイボリーの膝丈ワンピースに、短めのデニムジャケットを羽織り、ヒールサンダルやパンプスを合わせるコーディネートです。清楚なワンピースをデニムで軽く見せる組み合わせは、大学、デート、買い物などを想定した休日服として誌面に登場しました。
ツインニットとマーメイドスカートの上品コンサバ
コンパクトなツインニットに、膝下で裾が広がるマーメイドスカートを合わせるスタイルです。黒、ネイビー、ベージュを基調に、首元へ細いネックレスやスカーフを添え、華やかさよりも育ちのよさや落ち着きを感じさせる構成でした。
ミニスカートとロングブーツのお姉さんコーデ
体に沿うニットやシャツに、台形またはタイトなミニスカートを合わせ、膝下まであるロングブーツを履く組み合わせです。コートも細身に整え、巻き髪や光沢のあるバッグを加えることで、1990年代後半から2000年代前半らしい華やかな街着となっていました。
デニムと華やかトップスの赤文字カジュアル
細身またはブーツカットのデニムに、フリルブラウス、キャミソール、ビジュー付きニットなどを合わせる装いです。カジュアルなデニムにもヒール靴やブランドバッグを組み合わせ、ラフになりすぎない「お姉さんらしさ」を保っていました。
赤文字系の内外に位置する関連スタイル

社会的な場面で受け入れられやすい清潔感や節度を重視するスタイルです。赤文字系ではコンサバを土台にしながら、恋愛、モデル、ブランドへの憧れを感じさせる華やかさが加えられました。

柔らかな色、曲線的な形、スカートなどによって女性らしさを表現します。赤文字系の甘い誌面と重なりますが、フェミニンは雑誌文化に限定されない、より広いテイストです。

明るい髪、巻き髪、ボディラインを見せる服など、ギャルらしい要素を大人っぽく整えたスタイルです。赤文字系よりメイクや露出が強く、夜の外出や華やかな場面を意識した服装も多く見られました。

清潔な素材と整ったシルエットを重視する幅広いテイストです。赤文字系に見られた好感度や華やかなモデル像を必須とせず、現在の通勤服や日常着にも広く使われています。

職場での清潔感と動きやすさを基準にする服装です。赤文字系の通勤コーデから女性らしいブラウスやスカートが受け継がれましたが、現在はパンツやフラットシューズを含む実用性の高いスタイルへ広がっています。

原宿、古着、個性派ブランドなどを背景に、自分の好みや独創性を重視した女性誌系統です。周囲からの好感や理想的な女性像を提示した赤文字系に対し、青文字系は既存のモテやコンサバから距離を置く分類として語られました。

海外セレブを思わせるデニム、サングラス、大きなバッグなどを使った華やかなカジュアルです。2000年代後半には赤文字系雑誌にも影響を与え、甘いコンサバ一辺倒ではない方向を広げました。

渋谷109のブランドを中心とした、ギャル、セクシー、甘めの要素を含む若者向けスタイルです。赤文字系とブランドや読者が交差する場合もありましたが、マルキュー系は渋谷の店舗文化やギャル色がより明確でした。
赤文字系を形づくった雑誌・モデル・ブランド
『JJ』
1975年創刊の女性誌で、女子大生や若い女性を対象とする雑誌文化の先駆けとなりました。トラッド、コンサバ、お姉さん風など、時代ごとに変化しながら赤文字系の土台を作りました。
『CanCam』
通勤、恋愛、大学生活を意識した華やかな服装を提案し、2000年代には「エビちゃんOL」「優OL」「もえカジ」など、モデルごとのスタイルを広めました。
『ViVi』
赤文字系に含まれながら、海外トレンド、ギャル、セクシー、ストリートなどを積極的に扱いました。赤文字系が必ずしも清楚なコンサバだけではなかったことを示す雑誌です。
『Ray』
甘い色や花柄、清楚なコーディネートを得意とし、赤文字系のなかでも可憐で親しみやすい女性像を提示しました。
『PINKY』
2000年代に赤文字系と並べて語られた女性誌で、セクシーさ、カジュアル、ギャル感を含んだ華やかなスタイルを発信しました。
蛯原友里
『CanCam』の専属モデルとして「エビちゃんOL」を象徴し、巻き髪、花柄、アンサンブル、フレアスカートなどを組み合わせた愛され系ファッションを広めました。
押切もえ
『CanCam』では「もえカジ」など、デニムやカジュアル服を華やかに見せるスタイルを担い、赤文字系の着こなしに幅を持たせました。
山田優
『CanCam』でシャープさやトレンド感のある服装を見せ、甘いコンサバとは異なる強さを持つ赤文字系の女性像を提示しました。
服からヘアメイクまで統一された当時の着こなし
赤文字系のコーディネートでは、トップス、ボトムス、靴を個別に選ぶのではなく、モデルが示す完成された女性像へ近づけることが重視されていました。服装だけでなく、髪型、メイク、ネイル、バッグ、アクセサリーまで誌面を参考に揃える傾向がありました。
トップスは体に沿うニット、アンサンブル、フリルブラウス、短めのジャケットが中心でした。ボトムスには膝丈のフレアスカート、マーメイドスカート、ミニスカート、細身のパンツなどが使われ、ウエスト位置と脚の長さがはっきり見える構成が好まれました。
丈や量感は全体的にコンパクトで、現在のような大きなジャケットや床近くまであるワイドパンツは主流ではありません。上半身を小さく、腰を細く、脚を長く見せるシルエットが重視され、パンプスやロングブーツのヒールもスタイルを完成させる重要な要素でした。
配色は白、黒、ベージュ、ブラウンを土台に、ピンク、水色、ラベンダーなどの淡色を加える組み合わせが多く見られました。花柄、ツイード、レース、ファー、ビジューなども使われましたが、誌面によってはアニマル柄やメタリック素材など、強い要素も取り入れられています。
髪型は、長い髪を大きく巻き、トップや毛先にボリュームを持たせるスタイルが代表的でした。メイクでは、アイライン、マスカラ、つけまつげなどで目元を強調しながら、肌は明るく整え、ピンクやベージュ系のリップを合わせる傾向がありました。
小ぶりな服に対して、バッグはロゴや金具が見える存在感のあるデザインを選ぶ場合も多く、ブランドバッグが憧れや社会人らしさを示す役割を担っていました。服、髪、メイク、バッグまで統一する完成度の高さが、赤文字系らしさを最も強く伝える部分です。
ブーム後に残ったスタイルと考え方
赤文字系という括りは、女性誌の影響力が強かった時代に成立した名称です。現在も『CanCam』『ViVi』『Ray』などの雑誌は存在しますが、各誌の内容は変化しており、1990年代から2000年代の服装をそのまま示す分類ではなくなっています。
一方で、赤文字系が重視した清潔感、通勤とデートの兼用、写真に映える華やかさ、モデルを通じたスタイル提案などは、きれいめ、オフィスカジュアル、大人フェミニン、女子アナ風といった後の分類へ受け継がれました。
2020年代には「エビちゃんOL」などが平成ファッションの一例として振り返られることもあり、『CanCam』自身が当時のスタイルを再現する企画を掲載しています。これは赤文字系が再び一つの主流スタイルになったというより、2000年代を象徴する服装として歴史化され、再評価されている動きと捉えられます。
関連タグ
- コンサバファッション
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- お姉ギャル
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