原宿系ファッションとは、東京・原宿に集まったブランド、古着、音楽、サブカルチャーを自由に組み合わせ、既存の分類に収まらない個性を表現するファッションスタイルのことです。
一つの服装ではなく、異なるスタイルが共存する原宿の文化圏

原宿系ファッションは、決まった色、アイテム、シルエットによって成立する一種類のテイストではありません。ロリータ、ゴシック、パンク、古着、ストリート、ガーリー、モードなど、異なる服装を着る人々が原宿という街に集まり、独自の組み合わせや着方を発信してきた文化全体を指します。
一般には、鮮やかな色、重ね着、厚底靴、古着、柄同士の組み合わせなど、目立つ服装が連想されます。しかし、黒一色のゴシック系や、古着を自然にまとめる青文字系、ロゴやスニーカーを使う裏原系も原宿文化の一部です。
判断の基準になるのは、派手さではなく、ブランドや文化の異なる要素を自分の基準で編集しているかどうかです。流行をそのまま再現するより、丈、色、素材、小物、ヘアメイクまで含めて、着る人独自の世界観を見せる点に特徴があります。
「原宿系」という言葉が含む範囲
狭い意味の原宿系は、竹下通りやラフォーレ原宿周辺で見られた、色彩や装飾が強く、写真に映える個性的な若者ファッションを指します。複数の柄やアクセサリーを重ね、一般的な日常着とは異なる見た目を作る服装です。
広い意味では、表参道、キャットストリート、裏原宿などを含む原宿周辺から生まれたブランド、ショップ、雑誌、音楽、ストリートスナップの文化まで含みます。この場合、ロリータのような装飾的な服だけでなく、裏原系のストリートウェアや、古着を軸にした青文字系も対象になります。
原宿系は、原宿で販売された服を着れば成立するという意味ではありません。原宿という地域で形成された、既存の流行や他人の評価よりも、着る人の好みや文化的な所属を優先する姿勢を含む言葉です。
現在は、個別のスタイル名が細分化されたため、すべてを一括して原宿系と呼ぶ場面は以前より少なくなりました。それでも、日本独自のストリートファッションを束ねる歴史的・文化的な名称として使われています。
渋谷系・ストリート・青文字系との違い
渋谷系ファッションとの違い

渋谷系ファッションは、1990年代から2000年代の渋谷を中心に、ギャル、クラブ、音楽、百貨店やファッションビルの文化と結びついて発展しました。身体のライン、肌の見せ方、華やかなブランド感を重視する傾向があります。
原宿系では、古着、サブカルチャー、手作り感、異なるテイストの混在が目立ちます。渋谷系が流行やグループ内で共有される美意識を強く持つのに対し、原宿系は一人ごとの違いを見せる方向へ広がりました。
ストリートファッションとの違い

ストリートファッションは、音楽、スポーツ、スケートボードなど、街のコミュニティから生まれた日常着を広く指します。
原宿系もストリートから生まれましたが、スポーツウェアやスニーカーだけでなく、ロリータ、ゴシック、ガーリー、古着など、相反するスタイルを同じ街の文化として含みます。原宿系は地域と文化圏、ストリートは服が生まれる仕組みに重点がある言葉です。
青文字系との違い

青文字系は、2000年代から2010年代にかけて、原宿や古着を好む女性向け雑誌の系統を示した名称です。古着、カジュアル、ガーリーを親しみやすく組み合わせる服装が中心となりました。
原宿系は青文字系より広く、ロリータ、ゴシック、パンク、裏原系なども含みます。青文字系は原宿文化の一方向を、雑誌読者のスタイルとして整理したものです。
裏原系との違い

裏原系は、1990年代から2000年代の裏原宿を中心に発展した、ストリートブランド、スケート、ヒップホップ、アメカジ、ミリタリーなどを混ぜるスタイルです。
原宿系全体には少女服的なスタイルや装飾的なサブカルチャーも含まれます。裏原系はそのなかでも、ロゴ、グラフィック、スニーカー、限定商品などを重視するストリート側の流れです。
ロリータファッションとの違い

ロリータファッションは、パニエで広げたスカート、ブラウス、頭物、靴など、独自の着装体系を持つスタイルです。
原宿系は一つのシルエットを共有する服装ではなく、ロリータを含む複数の文化を束ねます。ロリータは原宿文化と深く関わって発展しましたが、原宿系の別名ではありません。
原宿がファッションの発信地になるまで
原宿系ファッションは、特定のブランドや人物が一度に作ったものではありません。街路、商業施設、歩行者空間、若者向けの店、音楽文化、雑誌などが重なり、時代ごとに異なるスタイルが発展しました。
1960〜1970年代|海外文化と若者向けの店が集まる
原宿や表参道周辺では、海外の衣服や生活文化を扱う店、若者向けのショップ、デザイナーの店舗などが増えました。
既製の百貨店ファッションとは異なる服を探す人が集まり、海外の流行をそのまま着るのではなく、日本の若者が自分なりに組み替える環境が作られていきます。
1970〜1980年代|歩行者天国と路上のパフォーマンス
原宿周辺の歩行者天国には、音楽やダンスを楽しむ若者が集まり、服装も集団ごとの文化を示すものになりました。
鮮やかな衣装で踊る若者、ロックやパンクの影響を受けた服装などが街頭で可視化され、原宿は商品を買う場所だけでなく、着た服を見せる場所として認識されるようになります。
1980年代|ラフォーレ原宿と個性派ブランド
1980年代には、ラフォーレ原宿をはじめとする商業施設や路面店が、若手デザイナーや新しいブランドを発信する場として存在感を高めました。
DCブランド、ニューウェーブ、パンク、少女的な服など、異なる方向のファッションが近い地域で販売され、原宿らしい混在が形成されます。
1990年代|ストリートスナップと裏原宿
1990年代には、街を歩く人の服装を撮影するストリートスナップが、原宿のスタイルを国内外へ伝えました。高価なブランドだけでなく、古着、手作り品、リメイク、小規模ブランドなどを混ぜた服装が注目されます。
同時期には裏原宿で、スケート、ヒップホップ、アメカジ、ミリタリーなどを背景とするブランド文化が発展しました。表通りの装飾的な服と、裏通りのストリートウェアが並行して存在したことも、原宿系の幅を広げました。
2000年代|ロリータ・ゴシック・青文字系が広く認知される
2000年代には、ロリータ、ゴシックロリータ、パンク、ヴィジュアル系、古着ミックスなどが、専門誌や音楽、ブランドを通して広く知られるようになりました。
その後、青文字系雑誌が、古着やガーリー、カジュアルを混ぜた原宿スタイルを、より日常的な服装として紹介します。原宿系は極端な装飾だけでなく、親しみやすい古着ミックスまで含む言葉になりました。
2010年代以降|SNSによって細かな名称へ分かれる
SNSが主な発信場所になると、服装は「原宿系」という大きな分類より、ロリータ、ゴシック、フェアリー、ストリート、Y2Kなど、細かな名称で共有されるようになりました。
街頭で同じ日に多くのスタイルが集まる状態は変化しましたが、異なる文化を組み合わせ、自分の服装として発信する原宿的な姿勢は現在にも受け継がれています。
原宿文化を構成する派生・関連テイスト

古着、ガーリー、カジュアルを混ぜ、親しみやすい個性を表す雑誌系統です。原宿系のなかでも、日常着へ取り入れやすい方向を示しました。

裏原宿を背景に、ストリートブランド、スケート、ヒップホップ、アメカジなどを組み合わせます。原宿文化のうち、ロゴやスニーカーを中心とするストリート側の流れです。

街の音楽、スポーツ、地域文化から生まれた服装を広く含みます。原宿では、海外のストリート文化と日本のブランド、古着が混ざり、独自のスタイルへ変化しました。

フーディー、グラフィックTシャツ、ワイドパンツ、スニーカーなどを日常着としてまとめます。原宿系のなかでは、装飾よりもラフな量感やスポーツ要素を重視する方向です。

少女服的な装飾とパニエによるシルエットを持つ、日本独自のファッション文化です。原宿周辺のブランド、雑誌、交流文化を通して認知を広げました。

ロリータの少女服的な形に、黒、十字架、薔薇などのゴシック要素を加えます。原宿の装飾的なサブカルチャーを象徴するスタイルの一つです。

ロリータのシルエットへ、タータンチェック、鋲、チェーン、ライダースなどを組み合わせます。甘さと反抗的な音楽文化を交差させた原宿的なミックスです。

黒、レース、歴史衣装、宗教的なモチーフなどで暗く幻想的な世界観を表します。原宿系のうち、色数を抑えながら装飾性を強く見せる方向です。

日本のロック音楽から広がった、装飾的で中性的な服装です。原宿の専門店やゴシック、パンク系ブランドとも関係を持ちながら発展しました。

人形のように整えた可愛らしさを表現します。ロリータより服装上の決まりが緩く、ミニ丈、レトロワンピース、甘い小物なども含みます。

リボン、フリル、花柄などで少女的な可愛らしさを表す広いテイストです。原宿系では、古着、厚底靴、強い色などを加え、一般的なガーリーより個性を強める場合があります。

渋谷のギャル、ストリート、クラブ文化などを含む近接する都市型スタイルです。原宿系とは地域も文化も接していますが、流行の共有と華やかな女性像を重視する点で異なります。
原宿のファッション文化を伝えたブランド・人物・媒体
ラフォーレ原宿
若手ブランド、個性的なショップ、期間限定企画などを集め、原宿から新しいファッションを発信する商業施設として機能してきました。
竹下通り
手頃な衣服、アクセサリー、若者向けの雑貨が集まり、原宿ファッションに触れる入口となってきた通りです。
雑誌『FRUiTS』
原宿を歩く人々の服装をストリートスナップとして記録し、ブランドだけでは説明できない自由な組み合わせを国内外へ伝えました。
雑誌『KERA』
ロリータ、ゴシック、パンク、ヴィジュアル系など、原宿周辺のサブカルチャーファッションを横断して紹介しました。
雑誌『Zipper』
古着、ガーリー、カジュアルを自由に混ぜる女性の原宿スタイルを紹介し、後の青文字系につながる服装を広めました。
藤原ヒロシ
音楽、ストリートウェア、ブランド企画などを横断し、裏原宿を中心とする日本のストリート文化に影響を与えました。
NIGO
A BATHING APEを通じて、グラフィック、限定販売、音楽、ストリートブランドを結びつけ、裏原系を世界へ発信しました。
増田セバスチャン
色彩や小物を重ねた原宿の「カワイイ」表現を、ショップ、アート、音楽などを通して発信してきました。
きゃりーぱみゅぱみゅ
音楽、衣装、映像を組み合わせ、原宿のカラフルで非日常的な世界観を国内外へ伝えました。
原宿系らしさを作る五つの編集方法
異なる出自の服を一つのテーマでつなぐ
古着のジャケット、ロリータ風のブラウス、スニーカーなど、別の文化に属する服を組み合わせます。ただし、何でも重ねるのではなく、色、柄、年代、モチーフのどれかに共通点を作ります。
色や柄の衝突を意図的に使う
原色、パステル、タータンチェック、アニメ調のグラフィックなど、強い要素を同時に使う場合があります。似た色を繰り返す、柄の大きさを変えるなど、衝突の中にも視線の順序を作ります。
重ね着で服の用途を変える
ワンピースの下にパンツを合わせる、シャツの上からビスチェを重ねるなど、本来の着用方法から服をずらします。丈の異なる裾や袖を見せ、全身に段差を作る点も特徴です。
小物とヘアメイクを服の一部として扱う
帽子、ヘアアクセサリー、バッグ、靴下、厚底靴などを、服を補う小物ではなく、全体のテーマを示す要素として使います。ヘアカラーやメイクもコーディネートの配色に含めて考えます。
ブランドと古着を価格に関係なく混ぜる
専門ブランドの服に古着や手作り小物を合わせるなど、価格や知名度で上下を決めずに組み合わせます。何を持っているかより、どのように編集したかを見せる考え方です。
原宿的なミックスを現在の街着へ置き換える
一つの文化を主役にして別要素を加える
ロリータ、ストリート、ゴシック、古着などを同じ強さで混ぜると、各要素の意味が見えにくくなります。
ストリートを主役にするなら、フーディーとワイドパンツを土台にし、ガーリーなバッグを一つ加えるなど、中心と補助を決めます。
色数ではなく面積を調整する
鮮やかな色を複数使う場合でも、大きな面積を一色にまとめると全体が安定します。
アウターとパンツを黒にし、インナーと小物へ色を集める、または淡色のワンピースへ強い色の靴を置くなど、色が占める範囲を分けます。
重ね着ではすべての境界を見せない
襟、袖、腰、裾から複数の服を見せると、情報量が増えます。現在の街着として整理する場合は、見せる境界を二か所程度に絞ります。
ロングシャツの裾と短いベスト、スカートとパンツの丈差など、重なり方が明確な組み合わせを選びます。
古着の使用感と新品の輪郭を組み合わせる
上下とも色落ちやダメージが強い古着にすると、原宿系より特定年代の古着スタイルへ寄る場合があります。
使い込まれたTシャツに形の整ったスカート、新しい厚底靴に古いジャケットを合わせるなど、状態の差を作るとミックスの意図が見えます。
象徴的な小物を一点残す
厚底靴、ヘッドドレス、グラフィックバッグ、大きなアクセサリーなど、原宿らしい記号を一つ選びます。
ほかの小物を簡潔にすると、装飾を大量に重ねなくても、一般的なカジュアルとは異なる個性が残ります。
現在の原宿系は歴史的名称と現役の姿勢を併せ持つ
原宿系ファッションは、現在も意味が通じる名称ですが、1990年代から2000年代のように、街を歩く複数の服装を一括して分類する使われ方は減っています。
現在は、ロリータ、ゴシック、ストリート、Y2Kなど、個別の名称でスタイルを示すことが一般的です。また、雑誌や店舗よりSNSを通じてコーディネートが共有されるため、原宿に実際に集まらなくても原宿文化の影響を受けられます。
一方、原宿には現在もファッション施設、古着店、ブランドショップなどが集まり、新しい表現を試す場所としての役割があります。
そのため、原宿系は特定年代の派手な服を示すだけの歴史用語ではありません。異なる文化を自分の好みで組み替え、他人と同じ完成形を求めないファッションの姿勢としても残っています。
原宿系ファッションで誤解されやすい点
カラフルで派手な服だけが原宿系である
黒を中心とするゴシック、落ち着いた古着ミックス、裏原系のストリートウェアも含まれます。色の多さではなく、原宿文化との関係と編集方法が重要です。
原宿で買った服なら原宿系になる
購入場所だけでは決まりません。ベーシックな服を原宿で買っても、一般的なカジュアルとして着れば原宿系とは限りません。
青文字系と同じ意味である
青文字系は、原宿や古着を好む女性誌系統を示す、原宿系の一方向です。原宿系全体には、ロリータ、裏原系、ゴシックなども含まれます。
ロリータやゴシックをまとめた名称である
ロリータやゴシックは重要な関連スタイルですが、原宿系にはストリート、古着、ガーリーなども含まれます。
1990年代から2000年代だけの過去の流行である
当時は街頭や雑誌を通じて特に強く可視化されましたが、関連ブランドや各スタイルは現在も継続しています。発信場所と分類方法が変化したと考えるほうが適切です。
目立つアイテムを多く使うほど原宿らしくなる
情報量の多さだけでは、服装の意図が曖昧になります。異なる要素の間に色、柄、文化、年代などのつながりを持たせることが重要です。
関連タグ
- 青文字系
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