VSCOガールとは、オーバーサイズTシャツやショートパンツに、海辺の生活を思わせる小物を組み合わせたSNS発のファッションスタイルのことです。
飾りすぎない服と明るい生活感

VSCOガールは、大きなTシャツ、短いスポーツショーツ、スニーカーやサンダルを組み合わせ、西海岸の学生生活や海辺の休日を思わせる軽快な雰囲気を表現したテイストです。服装そのものは簡素でしたが、スクランチー、貝殻ネックレス、ステッカーを貼った水筒など、当時を象徴する小物を重ねることでスタイルが識別されていました。
2019年頃、TikTok、Instagram、YouTubeなどを通じて広がり、自然体、健康的、環境に配慮しているように見えるライフスタイルと結びつきました。現在ではVSCOガールという名称で一式をそろえた服装はあまり見られませんが、当時のSNS文化を象徴する短期的なスタイルとして位置づけられています。
写真加工アプリから人物像へ広がった呼び名
写真の色調を整えたVSCOアプリ
VSCOは、写真の明るさや色調を調整し、フィルム写真のような質感を作れる画像編集アプリとして利用されました。
Instagramなどへ投稿する写真に、淡い光、粒子感、彩度を抑えた色調を加える使い方が広がり、海、空、植物、友人との日常を自然に見せる写真文化と結びつきました。
当初のVSCOは特定の服装を示す言葉ではありませんでしたが、似た色調の写真を投稿する利用者の持ち物や服装に共通点が見られるようになり、次第に「VSCOガール」という人物像が作られていきます。
2018年頃にまとまり始めた学生風の服装
2018年頃から、米国の学生を中心に、オーバーサイズTシャツ、スポーツショーツ、キャンバススニーカー、サンダルなどを合わせた服装がSNS上で目立つようになりました。
高価なドレスや複雑なレイヤードではなく、学校、ビーチ、友人宅などへそのまま出かけられる気軽な組み合わせが中心です。服装よりも、水筒、ヘアゴム、友情ブレスレットなどの持ち物が人物像を説明する役割を持っていました。
2019年にTikTokで定型化されたVSCOガール
2019年にはTikTokやYouTubeで、VSCOガールの持ち物、話し方、仕草を再現する動画が数多く投稿されました。
Hydro Flaskの水筒、Fjällräven Kånkenのバックパック、複数のスクランチー、貝殻ネックレスなどが「VSCOガールらしさ」を示す記号として並べられます。
環境保護を意識して金属製ストローや再利用できる水筒を持つイメージも広がりました。ただし、実際の環境活動というより、エコ意識を感じさせる商品や言葉がライフスタイル表現の一部になっていた側面もあります。
2020年代初頭に薄れた統一的なスタイル
VSCOガールは、特定の服と持ち物が明確だった一方、その定型性がパロディーや模倣動画にもつながりました。
2020年代へ入ると、E-girl、インディーキッド、That girlなど、別のSNS発スタイルが注目されるようになり、VSCOガールという名称は急速に流行の中心から離れていきます。
オーバーサイズTシャツや水筒などの個別要素は日常生活に残りましたが、それらを組み合わせてVSCOガールと呼ぶ文化は、主に2019年前後を示すものとなっています。
当時の人物像を決めた服と持ち物
- オーバーサイズTシャツ:身体を覆う大きなTシャツは、力を入れて着飾っていないように見せる中心的なアイテムでした。ロゴや大学名、海、アウトドアを思わせるプリントも多く見られました。
- スポーツショーツとショートパンツ:Tシャツの裾に隠れるほど短いナイロンショーツが使われ、活動的な学生生活やビーチ帰りのような軽さを表していました。
- スクランチーと貝殻アクセサリー:髪や手首へ複数のスクランチーを付け、首元にはプカシェルネックレスを加えることで、簡素な服装へ西海岸風の記号を足していました。
- スニーカーとスポーツサンダル:キャンバススニーカー、スリッポン、Birkenstock風サンダルなど、歩きやすく日常的な靴が選ばれました。
- 淡い色とタイダイ柄:白、ライトブルー、ミント、コーラル、ラベンダーなどの明るい色に、タイダイや海辺を思わせるプリントを取り入れていました。
2019年前後に見られた代表的なコーディネート
オーバーサイズTシャツとナイロンショーツ
大学名やアウトドアブランド風のロゴが入った大きなTシャツに、裾からわずかに見える短いナイロンショーツを合わせた基本的な装いです。白いソックス、キャンバススニーカー、手首に重ねたスクランチーを組み合わせ、Hydro Flaskの水筒を持つ姿が典型として共有されました。
タイダイTシャツとデニムショーツ
ブルー、ピンク、パープルなどのタイダイTシャツに、切りっぱなしのデニムショーツを合わせた服装です。足元にはスポーツサンダルやスリッポンを選び、貝殻ネックレスとキャンバストートを加えて海辺の休日を思わせる構成にしていました。
キャミソールとハイウエストショーツ
シンプルなキャミソールや短いタンクトップに、ハイウエストのデニムショーツを合わせた夏の装いです。大きなシャツを羽織り、Fjällräven Kånkenの小型バックパックやカラフルな水筒を持つ姿も多く見られました。
スウェットシャツとレギンス
大学ロゴ風の大きなスウェットに黒いレギンスを合わせ、白いスニーカーやスリッポンを履く組み合わせです。髪は高い位置で無造作にまとめ、スクランチーと友情ブレスレットで色を加えていました。
白Tシャツとサロペットショーツ
白いTシャツにデニムのショートオーバーオールを重ね、キャンバススニーカーを合わせた服装です。パステルカラーのスクランチー、貝殻アクセサリー、布製トートを加え、子どもっぽさの残るカジュアルな印象を作っていました。
SNS世代の前後につながる関連スタイル

Tシャツ、ショートパンツ、スニーカーを軸にした、VSCOガールの上位にあたる広いテイストです。VSCOガールでは、そこへ西海岸風の小物やSNS上のライフスタイル表現が加わりました。

オーバーサイズTシャツ、スニーカー、ロゴなどを共有する関連テイストです。ストリートファッションが都市や音楽文化を広く含むのに対し、VSCOガールは海辺、学生生活、写真投稿の明るい日常感を重視しました。

海、日焼け、ビーチ、ラフなTシャツなど、西海岸を思わせる要素を共有します。サーフファッションが実際のサーフィン文化と結びつくのに対し、VSCOガールでは海辺の雰囲気がSNS上のライフスタイルとして引用されました。

ナイロンショーツ、スウェット、レギンス、スニーカーなどを共有します。VSCOガールは競技的な機能性より、学校や友人との外出に適した軽快な服装として使われました。

健康管理、運動、水分補給、整った生活を発信する2020年代のSNS発スタイルです。VSCOガールの健康的な生活感を引き継ぎながら、より清潔で自己管理された人物像へ変化しました。

2020年代初頭にTikTokで広がった、原色と古着を使う明るいテイストです。VSCOガールより色や装飾が多く、ビーズアクセサリーやプリントを強く見せました。

VSCOガールと同時期にネット上で広がった対照的なスタイルです。VSCOガールが淡色と健康的な屋外生活を表したのに対し、E-girlは黒、チェック、ゲーム、暗い室内の配信文化と結びつきました。

原色、玩具、虹などの子ども向けモチーフを取り入れるテイストです。VSCOガールにもスクランチーや友情ブレスレットの無邪気さがありますが、キッドコアは幼少期を思わせる装飾をさらに強調します。

開放的な場所や夏の休日に適した服装を示す広いスタイルです。VSCOガールはリゾートの華やかさより、ビーチへ気軽に出かける学生風のカジュアルさを持っていました。
流行の輪郭を作ったブランド・アプリ・小物
VSCO
写真へフィルム風の色調や粒子感を加える画像編集アプリで、日常を自然で統一感のある写真として投稿する文化の基盤となりました。
TikTok
VSCOガールの服装、持ち物、話し方を再現する短い動画が多数投稿され、2019年に人物像を定型化した中心的なプラットフォームです。
Hydro Flask(ハイドロフラスク)
ステッカーを多数貼った金属製の水筒が、VSCOガールを識別する代表的な持ち物となりました。
Fjällräven Kånken(フェールラーベン・カンケン)
四角い形と豊富な色展開を持つバックパックで、学校生活やアウトドア感を示す小物として使われました。
Brandy Melville(ブランディー・メルビル)
シンプルなTシャツ、タンクトップ、スウェットなどが、VSCOガールの飾りすぎない学生風カジュアルと結びつきました。
Birkenstock(ビルケンシュトック)
足を包み込むカジュアルなサンダルが、ビーチ、学校、日常を横断する気軽な靴として選ばれました。
Vans(ヴァンズ)
スリッポンやキャンバススニーカーが、スケートや西海岸の雰囲気を加える定番の足元となりました。
Pura Vida Bracelets(プラヴィダ・ブレスレット)
糸やビーズを使ったカラフルなブレスレットが、海辺、友情、手作り感を示すアクセサリーとして人気を集めました。
服より小物に個性を集めた当時の着こなし
VSCOガールの着こなしは、服そのものを複雑に組み立てるより、簡素なカジュアルウェアへ特徴的な持ち物を重ねる方法が中心でした。大きなTシャツと短いショーツという簡単な組み合わせでも、水筒、スクランチー、貝殻ネックレスがそろうことで、当時の人物像として認識されていました。
トップスには、腰やショーツまで隠れるオーバーサイズTシャツが多く使われました。ロゴ、大学名、アウトドア、海、自然保護を思わせるプリントが見られ、タイダイ柄も当時らしい要素の一つです。
ボトムスは、ナイロン製のランニングショーツ、デニムショーツ、黒いレギンスなどが中心でした。ショーツはTシャツの裾に隠れるほど短く、上半身の大きさに対して脚をすっきり見せる輪郭が特徴です。
秋冬には、大きなスウェットシャツやフーディーにレギンスを合わせる服装も見られました。重ね着の技術よりも、学校や自宅で快適に過ごせる実用的な形が選ばれています。
配色は、白、ライトグレー、淡いブルー、ミント、ラベンダー、コーラルなどが中心でした。タイダイやブランドロゴを除けば、服の柄は比較的少なく、水筒のステッカー、バッグ、ヘアゴムなどに複数の色を散らしていました。
足元には、Vansのスリッポン、キャンバススニーカー、Birkenstockのサンダル、ビーチサンダルなどが使われました。白いクルーソックスを合わせる姿も多く、活動的な学生風の印象を作っています。
バッグはFjällräven Kånkenのバックパック、布製トート、巾着型バッグなどが代表的です。容量や実用性があり、学校用品、水筒、カメラなどを持ち運べる形が好まれました。
アクセサリーは、貝殻ネックレス、友情ブレスレット、ミサンガ、複数のスクランチーなどが中心です。高級感のある金属や宝石より、海辺や手作りを連想させる素材が多く使われました。
ヘアスタイルは、無造作な高いお団子、ポニーテール、自然なロングヘアなどが一般的でした。スクランチーを髪へ使わず、手首へ複数重ねることもVSCOガールを示す特徴でした。
メイクは、肌を軽く整え、リップバームやマスカラを使う程度の自然な見え方が中心です。強いメイクより、日焼けした肌、そばかす、屋外で過ごす健康的な印象が好まれました。
現在の視点では、極端に大きなTシャツ、裾から見えにくいスポーツショーツ、手首のスクランチー、貝殻ネックレス、ステッカー付きのHydro Flaskを同時に使った姿に、2019年頃の時代感が強く表れます。当時は、衣服の流行だけでなく、持ち物、写真の色調、環境への関心を示す言葉までが一つの人物像として共有されていました。
関連タグ
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